ガンバ大阪宮本恒靖体制の出帆:過去の失敗を繰り返さぬように

細かい違いはあるにしても、ガンバ大阪がクラブとしてあの「セホーンの悪夢」を再びやらかした、ということは否めないでしょう。誰の目にも明らかな補強の失敗を今さら取り戻すこともできない段階まできて、悪夢の完全再来を阻むためには、もはや現場頼みとならざるを得ません。こんなのは宮本恒靖に託すべき仕事ではない、という思いはありますけど…。

そのうえで、現場外のフロントの責任検証について、改めてしっかりやりましょうや。

なぜクルピ体制は失敗したのか 宮本新監督の初陣を前にG大阪が抱える問題を検証
2018年7月27日19時44分 スポーツ報知

 J1で16位と低迷するG大阪はレヴィー・クルピ監督(65)を解任し、宮本恒靖新監督(41)が誕生した。28日にはホーム・鹿島戦(パナスタ)で新体制初戦に臨む。その前に、C大阪では日本代表MF香川、乾らを育て上げ、攻撃的なサッカーを展開した経験豊富なクルピ監督が、なぜG大阪でここまで結果を出せなかったのか。宮本ガンバの船出を前に、G大阪が抱える問題点を検証する。

 今年1月。昨季まで5年間指揮を執った長谷川監督(現F東京監督)に代わり、クラブはクルピ氏を招へいした。G大阪の山内社長はその理由を「ボールを保持しながら試合の主導権を握り、アグレッシブにゴールを奪う魅力的なサッカーを復活、再構築し、2年間失っているタイトルを奪い返すため」と語っていた。長谷川監督の下では14年の3冠を含め4つのタイトルを獲得。しかし勝利を最優先に、堅守とカウンターをベースにした長谷川監督のサッカーから、かつてACLを制した2008年、西野監督が率いた頃のような攻撃を前面に押し出したスタイルに回帰したいという思いが、クラブにはあった。

 そこで白羽の矢が立ったのがクルピ監督だった。本人も就任直後は「勝者と呼ばれるチームは最後まで攻め抜くチーム」と語るなど、攻撃的なチーム作りを明言。クルピ監督の指導の特徴は、とにかくゲーム形式が多いこと。細かい戦術練習はほとんどなく、ゲームの中で選手たちの能力を見極めて最適な組み合わせを探る、という手法だった。

 しかしそんな練習に選手たちは戸惑った。昨季まで主に守備に関して明確な規律を重んじた長谷川監督の下でプレーしてきた。クルピの与える“自由”を、戦術の欠如と捉えた。「約束事が欲しい」。選手たちの中には、はっきりとそう語る声もあった。

 一方でクルピ監督も悩みは深かった。開幕から公式戦5連敗と結果が出ない中、「中盤のバランスが悪い。井手口がいない」と嘆き続けた。豊富な運動量で攻守に関わり、近年のG大阪で存在感を高めていた井手口だったが、1月に海外移籍。就任前から井手口不在は分かっていたはずだったが、38歳となった元日本代表MF遠藤がかつてほどの支配力を発揮できず、元日本代表MF今野も負傷離脱したことで、中盤のバランスに苦しんだ。3月に自身の希望でブラジル人MFマテウスを獲得したが、チーム状況は簡単には好転しなかった。

 クルピ監督はC大阪で香川ら若手を抜てきしたように、G大阪でも17歳FW中村をデビューさせるなど、次々と若手をピッチに送り込んだ。しかし、その選手たちがブレークする前に解任された。香川、乾ら特別な才能がいたC大阪と、近年は堂安、井手口と力のある若手が次々と海外移籍で流出したG大阪。G大阪の監督就任後、クルピはC大阪時代にみせた若手発掘のコツを問われると「ああいう才能と巡り合ったのは幸運だったんだ」と語っていた。その言葉は謙遜ではなく本音だった。「(力のある)選手がいない」。クルピが周囲にそう漏らした声も漏れ伝わっていた。

 結果を残せなかった背景には、やはりクラブのサポート体制にも問題があった。昨季は10位に終わったクラブが、シーズン前の補強で獲得した即戦力は元リオ五輪代表MF矢島と、DF菅沼のみ。矢島は出場機会をつかめずに今夏仙台に期限付き移籍、菅沼もレギュラー定着には至っていない。昨季負傷に苦しみ、わずか4得点に終わったFWアデミウソンの復活にかけて前線の補強は行わなかったが、そのブラジル人FWは前半戦も負傷に苦しみ、今季はまだわずか出場3試合の0得点だ。今夏にはFW柿谷=C大阪=、FW宇佐美=デュッセルドルフ=の補強に動いたが、ともに失敗。フロント陣の危機管理の甘さが招いた低迷と言わざるを得ない。

 この窮地に、クラブはU―23監督を務めていた宮本恒靖氏をトップチームの新監督に据えた。J1で監督経験のないクラブOBに、残留というミッションを託すという構図は初めてJ2落ちを経験した2012年と同じだ。この年は開幕直後に解任されたセホーン監督に代わり、3月下旬から松波監督が指揮を執ったが、悪い流れを変えることはできなかった。宮本監督に与えられた時間は、12年の松波監督よりも圧倒的に短い。

 山内社長は自身を含めたフロント陣について「基本的にはチームの体制に対し、いかに対応するのかが我らの命題なので、ぶれずにやれるかということです」と語り、シーズン終了まで現体制のまま宮本監督をサポートする意向を示した。宮本監督が今季、どんな手腕を発揮してチームを立て直すのかは未知数。しかしクラブのレジェンドに再び“火中の栗”を拾わせることになった現フロント陣の責任は、シーズン終了後にも改めて検証されるべき議題だ。今季J1に残留し、来年以降は再びタイトルを争うクラブに復権することができるか。Jリーグ有数の人気クラブと言えるG大阪が、大きな岐路に立たされていることは間違いない。

(G大阪担当・金川誉)

https://www.hochi.co.jp/soccer/column/20180727-OHT1T50222.html

【G大阪】宮本新監督、初戦はドロー「選手たちのがんばりは称賛に値する」
2018年7月28日23時2分 スポーツ報知

f:id:bluetears_osaka:20180729115439j:plain
後半、ベンチから飛び出すG大阪・宮本監督

 ◆明治安田生命J1リーグ第18節 G大阪1―1鹿島(28日・パナソニック スタジアム吹田)

 クルピ前監督の解任を受けて就任したG大阪の宮本恒靖新監督(41)が28日の鹿島戦(パナスタ)でJ1の監督として初采配をふるい、1―1の引き分けに持ち込んだ。セットプレーから鹿島に先制を許したが、後半25分に右MFで起用したDF米倉のクロスが直接ゴールインするラッキーな形で同点に。勝ち越しゴールは生まれず1―1の引き分けとなったが、その後もチャンスをつくった。リーグ戦の連敗を2で止めたドローに「選手たちのがんばりは、称賛に値すると思います」と振り返った。

 23日の就任後、練習はわずか3日。それでも守備の約束事を整理し、G大阪U―23で重用してきたMF高宇洋(20)をJ1初先発させるなど、さっそくチームに“宮本色”を注入した。その高は中盤の守備的な役割を担い、積極的にこぼれ球を拾うなど与えられたタスクを全う。フル出場で起用に応えた高を、宮本監督は「最初は緊張もあったと思いますけど、尻上がりに攻撃でもよくなったし、ボールをかすめ取る(守備の)動きもあった」と高評価した。

https://www.hochi.co.jp/soccer/national/20180728-OHT1T50249.html

【G大阪】“宮本色”采配で復調兆し…倉田「あと結果がついてくれば」J1残留へ第一歩
2018年7月29日6時5分 スポーツ報知

f:id:bluetears_osaka:20180729115616j:plain
鹿島とドローに終わり、チームスタッフと握手するG大阪・宮本監督(左)

 ◆明治安田生命J1リーグ第18節 G大阪1―1鹿島(28日・パナソニック スタジアム吹田)

 “宮本色”のにじみ出たJ1初采配で、G大阪が復調の兆しを感じさせる勝ち点1をつかんだ。クルピ前監督の解任を受け、G大阪U―23の監督から昇格する形で指揮を執った宮本監督の下、1点を追う後半25分にDF米倉のゴールで追いついて引き分け。リーグ戦の連敗を2で止めたドローを、新指揮官は「選手のがんばりは称賛に値すると思います」と振り返った。

 23日の就任後、練習はわずか3日。それでも守備の約束事を整理し、先発にU―23で重用してきた20歳MF高をJ1初先発させるなど、さっそくチームに変化を注入。試合前には「新しいG大阪を見せよう!」と選手を鼓舞し、ピッチに送り出した。「内容、気持ちの入り方、全部が違った。あと結果がついてくれば」とMF倉田。順位は16位のままだが、選手の気持ちが前を向いたことが大きな変化。宮本ガンバが、J1残留へ向けた第一歩を踏み出した。

https://www.hochi.co.jp/soccer/national/20180729-OHT1T50074.html