最初はこちらの記事を読んで知ったんです。野洲の廃墟マンション問題。
その記事の冒頭で野洲の話が出てるんですけど、「添えられてる写真が野洲の建物と違わないか?」と思ったんで、京都新聞の記事を読んだわけです。
廃墟マンション崩壊の危険 アスベスト露出、飛散の恐れも
問題となっている空き家のマンション。昨年6月の大阪府北部地震で県道に面する南側の壁が全て崩れ落ちた(野洲市野洲)滋賀県野洲市野洲の老朽化した空き家マンションを巡り、市が対応に苦慮している。壁が崩れてがれきが散乱したり、鉄骨に吹き付けられたアスベストが露出して危険な状態だが、土地・建物の所有者の一部は連絡が取れず、自主解体の議論が進まない。行政代執行による解体にも踏み切れない中、周辺住民からは早急な対策を望む声が上がっている。
野洲川橋の西約100メートルにある「美和コーポ」。築47年の鉄骨3階建て9部屋のマンションで、近くの住民によると約10年前から住む人はいないという。
昨年6月の大阪府北部地震で県道に面した南側の壁は全て崩れ落ち、鉄骨や部屋の中がむき出しの状態になった。3階廊下の柵や2階天井が崩落し、階段も腐食が進んだ様子が分かる。がれきが積み重なる場所から約3メートルの所には歩道があり、県道は乗用車やトラックが頻繁に通る。
近隣企業の通報で状態を把握した市は昨年8~9月に2回、所有者への説明会を開いて危険性を伝え、自主解体を求めた。解体には所有者全員の同意が必要だが説明会に集まったのは9人中7人。残る2人は、実態がなく連絡が取れない法人名義の所有者と、呼び掛けに応じない個人の所有者という。所有者代表の片岡昭芳さん(75)は「7人の中では1日も早く解体しなければと思っている。今は弁護士に所有者特定を頼みつつ、法定代理人を立てることも検討中」と話す。
市は昨年9月、空き家対策特別措置法に基づき同マンションを「特定空き家」に認定したが、市住宅課は「行政代執行での取り壊しとなれば、業者への解体設計の依頼や議会の予算議決などに時間がかかり、解体は来年以降になる。所有者に費用請求しても、どこまで回収できるか」と話す。
総務省が先月22日に公表した実態調査では、全国で代執行による取り壊し費用を全額回収できた事例は10%(5件)にとどまり、全額を自治体が負担したのは27%(13件)に上った。
市の依頼で専門業者が昨年7月に行った調査では、むき出しになった鉄骨に使われた吹き付け材から、国の基準値(0・1%)を大きく上回る28・4%のアスベストを検出。吹き付け材は地面にはがれ落ちており周囲に飛散している可能性が高いという。対策について市は「工事用シートで覆ってもアスベストは繊維が細かく通り抜けるため意味がない」と説明する。
周辺住民には今のところ健康被害はないが、近隣に住む女性(75)は「昨年は台風が来るたびに壁や屋根のトタンなどが道に散乱して車が出せなくなった。また災害があればどうなるか分からない。すぐに撤去してほしい」、男性(72)は「あれだけ老朽化しているのになぜ市が取り壊せないのか疑問だ」と話した。
市住宅課の大橋幸司課長補佐は「老朽化で崩壊が進み、アスベストが飛散している危険性は認識しているが、空き家対策特措法では所有者による処理を基本とし、すぐに手を出せない。所有者の話がまとまらず、代執行すると3千万~4千万円かかり、財政への負担は小さくない」と話す。
■「老朽化が激しく、非常に危険」
都市計画やアスベスト問題に詳しい立命館大の石原一彦教授は、マンションの危険性について「建物の老朽化が激しく、非常に危険だ。上の階から何か崩れ落ち、いつ大惨事が起きてもおかしくない状況で、早急に解体すべきだ」と話している。
【 2019年02月17日 17時23分 】
こわー。これは怖いわ。古いといっても50年と経たない建物、ここまで荒れるのは、やっぱり10年も住人のいない空き家ってのが大きいんでしょうね。メンテナンス次第で建物寿命は変わる、というのはよく言われてることですし。
廃墟マンション「いつ大惨事起きても」 専門家「早急に解体を」
1階廊下の屋根が剥がれ落ち、鉄骨周りのアスベストを含む吹き付け材がむき出しになっている滋賀県野洲市野洲の老朽化した空き家マンションを巡り、市が対応に苦慮している。壁が崩れてがれきが散乱したり、鉄骨に吹き付けられたアスベストが露出して危険な状態だが、土地・建物の所有者の一部は連絡が取れず、自主解体の議論が進まない。行政代執行による解体にも踏み切れない中、周辺住民からは早急な対策を望む声が上がっている。都市計画やアスベスト問題に詳しい立命館大の石原一彦教授と現地を訪れ、話を聞いた。
-マンションの危険性についてどう評価するか。
建物の老朽化が激しく、非常に危険だ。上の階から何か崩れ落ち、いつ大惨事が起きてもおかしくない状況で、早急に解体すべきだ。
-アスベストの危険性はどうか。
検出されたクロシドライトはアスベストの中で最も発がん性が高い。今のところ健康被害がないから問題ないというものではなく、20~40年後に肺がんや中皮腫などの健康被害が出ることがある。
-アスベストだけでも先に対処できないか。
一般的には、アスベストに薬剤をかけ、飛散しないように固定化する対策が考えられるが、建物の老朽化が激しいため難しいと思われる。また、空き家対策特措法ではアスベストが飛散している危険な状況に対し緊急的に手が打てない。同様のケースは今後増える可能性があり、放置空き家のアスベスト対策の法制度をつくる議論が必要だ。
【 2019年02月17日 16時58分 】
けっきょく野洲市は行政代執行に踏み切るみたいで、市民の安全と考えればこれはもうやむを得ない措置だと思います。でも、こんな感じの建物が空前絶後のレアケースだとは考えられませんから、今後似たような物件が続出するようだと、自治体も自前予算では引き受けきれないでしょう。
廃墟マンション解体へ市が方針変更 アスベスト露出、行政代執行
滋賀県野洲市野洲の老朽化した空き家マンションの壁が崩落して危険な状態となっている問題について山仲善彰市長は18日、従来の方針を変更し、早ければ11月に行政代執行による解体に着手する考えを明らかにした。
県道に面した築47年の鉄骨3階建てマンションの南側の壁が崩れ、有害なアスベストが露出するなどの現状を京都新聞が17日朝刊で報道した。市は「法律では所有者による処理を基本とし、すぐに手を出せない」としていた。
市によると、4月に空き家対策特別措置法に基づき取り壊しの命令を行う予定で、約2カ月間で所有者9人の合意による自主解体が行われない場合、議会に予算要求し、最短で11月に着手する方針。解体費用は5千万~6千万円かかる可能性もあるという。
山仲市長は「臨時議会を招集してでも工事費を予算化し、市民の安全を守る観点から代執行の手続きを進める」と話した。
【 2019年02月18日 21時57分 】
賃貸ならともかく、分譲マンションの場合、所有者・住人がいなくなった後、そこを購入して新たに住み始める人がいなければ、それは自動的に空き家化するわけです。老朽化した建物の解体費用を負担すべき所有者が、転居なり失踪なりしてても生きていれば請求できる可能性はあるでしょうが、この少子高齢化社会で身寄りもなく死んでたらどうしようもありません。
住人的には「自分は死ぬまで住めればいい、後は任せた(知らない)」となりそうですしねえ。でも、そこを後で誰かがフォローしないといけない場面は確実に出てきます。
「詳しくは本を読め」ということになるんでしょうけど、上記冒頭のポストセブンの記事に書いてある数々の指摘は、誰もがいずれ向き合わないといけなくなる事態の予告として読まないといけないでしょう。
まあ、今ある経年建築も怖いっちゃ怖いものの、それ以上に昨今のタワーマンションがホントに怖いですよ。あれ、50年後にはどうなってるんでしょうかねえ。
マンションは、基本構造が鉄筋コンクリートである。その寿命はまだ明解にはされていないが、もって100年、適切なメンテナンスをすれば200年に延ばせる可能性も指摘されている。だが、人が住まなくなった築47年のマンションは、すでに危険な状態である。
総務省の調査によれば、現在、日本には820万戸の空き家があり、そのうち約6割がマンションなどの共同住宅だ。また、国土交通省によると2017年時点で築40年超のマンションは72.9万戸。その20年後には、これが351.9万戸まで増えるという。2017年時点で築20年以上のマンションがそれだけ存在するということだから、ほぼ確実な未来予想だ。
海外に目を転じれば、パリやローマには何百年どころか千年以上前に建設された集合住宅に、今も人が住んでいたりする。だから、鉄筋コンクリート造の日本のマンションも、そういう可能性があるなどと考えてはいけない。パリやローマの長寿命な集合住宅は石造や煉瓦造である。ヨーロッパ大陸にはほぼ地震がないので、そういった脆弱な構造でも1000年以上の建物が存在し続けることができる。
しかし、日本は地震大国である。2018年の大阪北部地震で小学校のブロック塀が崩れて女児が犠牲になった事件は記憶に新しいはずだ。
日本では鉄筋コンクリート造という丈夫な構造でなければ、集合住宅を作ることはできない。鉄筋コンクリート造の建物の躯体にはコンクリートに包まれた鉄筋や鉄骨が使われている。だが、鉄筋や鉄骨は基本が鉄である。鉄は必ず錆びる。錆びると膨張してこれを包むコンクリートを破断させる。それによって、建築時の耐力を損なう。
すなわち、すべてのマンションはいずれ廃墟になり、解体の運命は免れない。幸運なほんの一部のマンションは建て替えられて元の住民も軽い負担で住み替えられるかもしれない。しかし、そういうマンションは全体の1%か、多くて2%だ。ほとんどの分譲マンションは、今回の報道にあるような廃墟化、そして巨大な“粗大ゴミ”となる運命が待っている。
https://www.news-postseven.com/archives/20190220_873247.html?PAGE=3
では、どうすればよいのか? まず、法制度を変えるべきである。現行の、区分所有者の権利をあまりに尊重するような仕組みは改めるべきだ。
次に、解体に備えた費用を積み立てるべきだろう。定期借地権といって50年から70年後には解体したうえで更地にして地主に土地を還す、という権利形態の分譲マンションがある。この定期借地権のマンションでは、管理組合が区分所有者から将来の解体費用を毎月徴収している。
こういう「解体費用の積立」を通常のマンションでも行うべきだろう。そうすれば、何十年か先の解体もスムーズに行えるのではないか。
多くの人は分譲マンションに幻想を抱いている。マンションが半永久的に存在して、自分たちの資産になるものだと考えているのだ。しかし、その考えは間違っている場合が多い。
都心立地の一部のマンションは、敷地自体の資産価値が高いので建て替えや売却が容易だが、近郊や郊外に立地する分譲マンションの多くは、老朽化すれば資産価値がゼロどころかマイナスになってしまう。
特に将来は立地の資産価値が危ぶまれている湾岸埋立地のタワーマンションは厄介だ。解体費用は1住戸あたり500万円以上と想定される。しかし、人口が減少した未来には解体後に敷地を売却しても、解体費用さえ賄えるかどうかが危ぶまれる。
繰り返すが、すべてのマンションは廃墟になる。少なくとも、その危険をはらんでいる。我々は今からそういう近未来に備えるべきではないか。
https://www.news-postseven.com/archives/20190220_873247.html?PAGE=4
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