ハンガーストライキと入国管理センターと仮放免

この記事を書こうと思ったきっかけは西日本新聞の記事ですが、それを日経新聞で補足すると、こんな流れになってます。

収容外国人ハンストで死亡 入管施設で初、報告書公表
2019/10/1 19:25

出入国在留管理庁は1日、長崎県大村市の大村入国管理センターで6月、収容中の40代ナイジェリア人男性が死亡したのは、ハンガーストライキが原因とする調査報告書を公表した。入管施設でのハンストによる死亡は初めて。

男性は2015年11月、施設へ収容され、長期にわたる拘束に抗議していた。入管庁は男性が食事や治療を拒否し、強制的な治療も困難だったとして、対応は「不相当だったとは言えない」と結論付けた。

男性は薬物事件で執行猶予付き懲役刑の判決を受けた後、窃盗などで実刑となり、仮釈放後、大阪入国管理局(当時)に収容、後にセンターに移送された。報告書は、起こした事件が悪質で常習性があり、仮放免は許可できなかったとした。

本人が出国を拒んだり、本国が引き取りを拒否したりして、退去強制となりながらも送還できない外国人は多い。施設収容も長期化傾向で、市民団体などが人権上の問題があると指摘。長期収容に抗議し、仮放免などを求める収容外国人のハンストも拡大している。

報告書は「収容長期化の問題は、送還の促進で解決すべきだ」とした上で、ハンスト防止や、強制的な治療体制の整備といった再発防止策を検討する必要があるとした。

報告書によるとセンターは今年5月30日、男性が食事をしていないとの情報を把握。センター内で診察したほか、職員が食事や治療を受けるよう説得したが男性は拒み、6月24日に死亡した。死因は「飢餓死」だった。

入管庁によると、退去強制令書を出され、6月末時点で入管施設に収容されている外国人1147人のうち、約75%に当たる858人が送還を拒否している。858人中366人が薬物事犯や殺人、性犯罪などで有罪判決を受け、うち84人が仮放免中の犯罪だった。ハンストは6月1日~9月25日、198人が行い、うち36人が9月25日時点で続けている。

〔共同〕

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO50457410R01C19A0CR8000/

収容者のハンスト延べ235人 19年夏以降、入管施設
2020/3/27 17:00

不法滞在などのため入管施設に収容された外国人のうち、2019年6月から20年1月末までに延べ235人がハンガーストライキ(ハンスト)をしたことが27日、出入国在留管理庁の調査で分かった。ハンストは仮放免を得るのが主な目的で19年6~9月に急増したが、その後は減少傾向にある。同庁は「説得などの効果が表れている」と説明している。

ハンストをしている収容者の国籍は、国が身柄の引き取りを拒否しているイランが63人で最も多く、スリランカ(25人)、トルコ(20人)が続いた。1月末時点でハンストを継続していたのは8人だった。

収容者のハンストは、長崎県大村市の大村入国管理センターで19年6月にハンストをした40代ナイジェリア人男性が死亡し、問題化した。同時期のハンストは延べ24人だったがその後急増し、同年9月下旬には延べ198人になった。

同庁は職員による説得を増やしたり、臨床心理士や医師によるカウンセリングを実施したりするなど、ハンスト対策を強化している。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO57315460X20C20A3CR8000/

入管収容者がハンストで半減? 死亡例受け仮放免増加、出所後も困窮
2020/4/6 6:00
西日本新聞 社会面 西田 昌矢

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収容者が半減した大村入国管理センター=長崎県大村市

 強制退去処分となった外国人を収容する西日本唯一の施設「大村入国管理センター」(長崎県大村市)の収容者が昨年6月末の128人から、今年4月は63人に半減した。昨年、仮放免申請を繰り返し却下されていた長期収容者がハンガーストライキの末に死亡。収容者の間に抗議のハンストが広がったため施設側が警戒し、仮放免する事例が増えたとみられる。ただ、外に出ても困窮する外国人は多く、識者は「仮放免では収容者の人権救済につながらない」と指摘する。

 「ハンストはだめですよ」。2月、施設の面会室。収容者を支援する同市の川田邦弘さん(68)はネパール人男性を諭した。男性は糖尿病で手足に神経障害があり、ハンストは命にかかわるからだ。

 昨年6月、不法滞在で収容されていたナイジェリア人男性が死亡。「日本人女性との間にできた子どもに会えなくなる」と帰国を拒んだ男性は、収容中の3年7カ月間で4回、仮放免を申請し、いずれも却下されていた。最後は食事を取らず衰弱していた。これが知れ渡ると抗議のハンストが急増。国内にもう一つある東日本入国管理センター(茨城県)でも広がった。

 出入国在留管理庁によると、大村では翌7月以降の半年間だけで延べ44人を仮放免。6人だった前年同期に比べ大幅に増加した。新規収容者は前年の71人から32人に減少。東日本も同じ傾向にあり、昨年6月末と比べ、今年4月の収容者数は2割近く減少している。

 仮放免増加や新規収容減少について、同庁関係者は取材に対し「ハンストによる収容者死亡が(審査に)影響している」と認めた。

 大村のセンターには7年前から常勤医師がいない。非常勤医師が交代で収容者を診察しているが、ハンストには対応できなかった。川田さんは、再び犠牲者が出ることを懸念する施設側が「やむなく仮放免で外に出している」とみる。

 一方で、仮放免されても不法滞在扱いで就労はできず、医療費は全額自己負担になる。長期収容で体調不良の人にとっては生活困窮が避けられず、行方不明になるケースもあるという。

 大村に収容中、体調を崩した日系ブラジル人男性は3月に仮放免されたが、外では通院治療を要する。日本に住む両親は収入が少なく、医療費は家計を圧迫する。取材に「外に出ても自由はない」と嘆いた。

 在留外国人の生活実態を調べる宇都宮大の田巻松雄教授(国際社会論)は「仮放免は自由が制約され、人間的な生活はできない。国は収容者の事情を考慮して特別に在留を許可し、労働や移動の自由を保障するなどの措置が必要だ」と指摘する。 (西田昌矢)

【ワードBOX】仮放免

 出入国在留管理庁の施設に収容されている外国人の身柄を、健康や人道上の理由で一時的に解放する制度。本人や親族の請求によるもので、身元保証人や保証金を要する。審査を経て仮放免されても、原則として請求時に届け出た居住地の都道府県の外には出られない。仮放免中も定期的に入管施設への出頭を命じられ、施設の判断で再び収容されることもある。殺人や強盗など重大犯罪を犯した収容者は原則として対象にならない。

https://www.nishinippon.co.jp/item/n/598186/

産経新聞によれば、長期収容者の過半数、約6割が、刑事事件とは関係のない入管法違反といった行政犯であるということです。だとすれば、この問題、「行政の運用」という側面から問題点や課題を洗い出し、その改善点を見出していく、というアプローチが必要でしょう。外国人問題ではなく、日本の入国管理行政の問題として、ということですね。

www.sankei.com
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https://www.jstage.jst.go.jp/article/jws/16/0/16_13/_pdf