「孤独死の普遍性」ということ。

「特殊清掃員が見た孤独死現場」なんていう煽り文句は、今となっては逆にありふれていてそれだけでは対して興味を惹かないのです。ですが、この記事の場合、「孤独死の現場に特徴的な共通性はない」「孤独死とは、たまたまひとりで死んだだけのことであり、それ自体は不幸ではない」といったちょっと気を引く言葉が目に付いたので、ここにとどめておきたいと思った次第です。

特徴的な共通性はないということは、誰もが無縁ではないということであり、つまりは孤独死なるものが特殊なあり方ではなく、普遍的な死にざまになっていく可能性が高い、ということでしょう。それならそれで、孤独死への向き合い方を変えていかないといけないような気がします。

2020.04.19 07:00  マネーポストWEB
特殊清掃員が見た孤独死現場 40~60代の一人暮らしのリスク

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孤独死の現場は古いアパートに限らないという(イメージ)

 東京都監察医務院の調査によると、東京23区内で、65才以上のひとり暮らしの高齢者が自宅で亡くなったケースは、2002年が1364件だったのに対し、2019年は3882件と、約3倍にも増加している。ひとりのときに自宅で死ぬことの大きな問題は、遺体の発見が遅れる点にある。日が経つほど腐敗が進むからだ。

 清掃会社『まごのて』代表取締役の佐々木久史さんはこう語る。

「当社では年間約1000件以上の清掃業務を行っています。特殊清掃を始めた当初は年間で数十件ほどの依頼でしたが、いまは業務全体の約2割が孤独死の案件です。孤独死が増えていることを実感しています」

 佐々木さんによれば、孤独死の現場に特徴的な共通性はないという。よくイメージされるようなゴミ屋敷とは限らず、きれいに片づいた部屋も少なくない。男女比は8:2で、高級マンションから低家賃のアパートまで、現場は多種多様。さらに言えば、ひとり暮らしとも限らないという。

 家族と同居していたのに関係が薄く、自室で亡くなっていたのに、数日間家族に気づかれなかった例もあるからだ。つまり、結婚していようが子供がいようが、ひとり暮らしであろうがなかろうが、誰もがひとりで死ぬ可能性がある。

「われわれが呼ばれるような現場は、実は、後期高齢者のかたが亡くなった部屋は少ないんです。高齢者はデイサービスなどを受けているケースが多く、自宅に来てくれる人がいるので、ひとりで亡くなっても数日以内に発見される可能性が高い。問題になるケースが多いのは、40~60代のひとり暮らし。現役世代のため、デイサービスなどを使うこともなく、亡くなってもしばらく気づかれないんです」

 孤独死とは、たまたまひとりで死んだだけのことであり、それ自体は不幸ではないと、佐々木さんは考えている。

「多くの現場を見てきて思うのは、腐敗するまで見つけられないような死に方は、幸福だったとはいえない、ということ。“誰にも看取られずに死ぬ”ということ自体は、不可抗力だったり、自分でそういう生き方を選んだのだから、幸不幸では語れません。しかし、“見つけてもらえない”のはまた意味が違うと思います」

 ひとり暮らしの場合、亡くなってから一両日中には見つけてもらうように、準備をしておくことが大切だという。

「あるひとり暮らしのかたは、あえて新聞を購読し続けていました。玄関に新聞がたまっていたら、何かあったというサインになるから、と。そういう備えは必要だと思います」

 いつ、何が起こるかわからないのが人生。特にひとり暮らしなら、死んだ後について、考えなくてはならない。それこそ、幸せな最期を迎えるために、必要なことなのだ。

※女性セブン2020年4月23日号

https://www.news-postseven.com/archives/20200419_1557318.html