シネリーブル梅田で「薬の神じゃない!」を観る。

普段は韓国映画を観る機会が多いんですけど、たまには中国映画を観たりもします。

これは、評判を耳にして、期待しつつ観に行ってきました。期待以上によかったです。間違いなく名作。

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我利我欲の塊のように見える俗物っぽさ丸出しの人間が、何故このストーリーの中心にいるのか。

何が人を動かすのか、何が人の行く手を阻み、何が人をダメにするのか。いろんなことを考えることができますし、単純に泣くこともできます。

万人に勧めたいところですが、とりわけ遵法意識ばっかり高いいい子ちゃんには、観てもらいたいものです。

中国でメガヒット 実話を元にした社会派娯楽作「薬の神じゃない!」プロデューサーに聞くヒットの理由
毎日新聞 2020年10月30日 12時10分(最終更新 10月30日 12時10分)

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「薬の神じゃない!」の一場面=(C)2020 Cine-C. and United Smiles Co., Ltd. All Rights Reserved

 2018年に中国で興行収入約30億7000万元(約480億円)というヒットを飛ばしたウェン・ムーイエ監督(35)の映画「薬の神じゃない!」が現在公開中だ。この作品は14年に中国で実際に起きたジェネリック医薬品の密輸事件(通称「陸勇事件」)を題材にして作られた。プロデューサーは、ニン・ハオ(44)と、主演も務めたシュー・ジェン(48)の2人。ともに中国映画界をけん引するヒットメーカーだ。シューが「最初は笑いながら見始めて、泣きながら見終わる映画です。海外の方にも楽しんでもらえる作品だと思います」と語るように、日本でも口コミで評判が広がっている。2人に、映画がヒットした理由などを電子メールで聞いた。【西田佐保子】

 映画のあらすじはこうだ。上海で男性向けのインドの強壮剤を販売するチョン・ヨン(シュー)の店に、慢性骨髄性白血病を患うリュ・ショウイー(ワン・チュエンジュン)が訪れる。リュは、国内で認可されている治療薬は高額で購入できないため、成分が同じインド製の安価なジェネリック薬(後発医薬品)を代理で購入してほしいと懇願する。最初は申し出を断ったチョンだったが――。

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「薬の神じゃない!」の一場面=(C)2020 Cine-C. and United Smiles Co., Ltd. All Rights Reserved

 映画のベースになった陸勇事件では、慢性骨髄性白血病を患う湖南省在住、陸勇という名前の男性が、国内で承認されている高価な治療薬と同じ効果が期待できる安価なインド製ジェネリック薬を個人で輸入し、闘病仲間にも販売したことで、14年に“ニセ薬”販売などの疑いで逮捕・起訴された。しかし、同じ病気で苦しむ患者を中心に減刑嘆願の署名が集まり、15年に起訴は撤回され、釈放された。この事件は、中国で高額医薬品問題が注目され、医薬品業界が変わるきっかけにもなった。

 事件を受けた映画は大きな話題を呼んだ。その反響を受け、李克強首相が抗がん剤の価格引き下げなどの措置を早期に実施するよう関係当局に指示したことがニュースになっている。「薬の神じゃない!」は、まさに社会を動かす映画となったのだ。

若手監督を信じ、任せた

 ――ニンさんはこれまで監督として数多くのヒット作を手掛けてきました。監督・脚本に、本作で長編映画デビューとなるウェンさんを選んだのはなぜですか。

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ニン・ハオさん=本人提供

 ◆ニン 実は私がこの映画を監督したかったのですが、(若い監督の映画製作をサポートするための)「Dirty Monkey 72 Transformations Film Project(以下、Film Project)」というプロジェクトで、ウェンさんと出会いました。

 彼はとても才能があり、この映画を撮るのにふさわしい人物だと判断しました。能力のある監督をみたら、一緒に仕事をしたくなります。そこで監督は彼に任せ、優秀な俳優で、素晴らしい監督でもあるシューさんを誘って、一緒にプロデュースをすることにしました。

 ――Film Projectについて教えてください。

 ◆ニン 私自身も(俳優のアンディ・ラウさんや監督のダニエル・ユーさんらが手掛けた)新人発掘プロジェクト「FFC(フォーカス・ファーストカット)」にお世話になりました。今度は自分が新人監督を助けたいと考えて立ち上げたのがFilm Projectです。

 私の仕事は監督に「考えさせる」ことです。戦場には将軍が一人しかいないように、プロデューサーとして監督を尊重し、自主権を与えます。言うなれば、私が担うのはボクシングの練習相手のような役割ですね。

 ――中国では、シューさんやニンさんのように、監督、製作、俳優など、ボーダーレスに活躍する映画人が多いですね。

 ◆シュー 「俳優として成長すれば、現場経験を生かし、監督としていい映画が撮れる」と中国では言われています。異なる分野にチャレンジすることで自分を高め、映画業界にも貢献できます。

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シュー・ジェンさん=本人提供

 作品を選ぶ際、監督、俳優、製作(プロデュース)では、それぞれ物事を見る角度と範囲は違いますが、“良い物語”と“良い役”であることは、映画を選ぶ上の基本です。

 今回、ニンさんからもらった脚本を読んで、心を打たれました。陸勇の行動に多くの人が感動しました。このような英雄を演じられることは、幸運であり、光栄です。だから「表(俳優)」も「裏(プロデューサー)」もやりたいと思いました。

特別な映画 テーマは「慈悲」

 ――社会派ドラマ、かつ低予算で、ここまでの大ヒットとなった理由をどのようにお考えですか。

 ◆シュー 誰もが病気になり、薬を飲みます。この物語が「自分ごと」になるかもしれない。多くの人にとって関心が高いテーマだからこそ、共感を得られたのだと思います。また、観客はこの物語を通し、社会的弱者に関心を持ち、よりいい医療環境を望むようになったと思います。

 公開後、医療関係の方たちを含め多くの方に、「映画を撮ったあなたたちに感謝します」「中国映画と国民のために大きな貢献をしました」といったメッセージをいただきました。映画はときに、社会に対する責任と義務を負うべきです。光の当たらなかった人々や問題が注目されるきっかけになったことは、とても素晴らしいと思います。

 ◆ニン 監督、俳優、製作、それぞれが仕事に真剣に取り組み、集中すれば、最後には必ずいい結果が出ます。この映画は、そのようにして作られました。

 観客が見たい映画を撮ろうと努力していますが、簡単ではありません。私は映画を撮ることについて、ずっと悩んでいました。「初心を忘れていないか?」「映画を愛するために映画を撮っているか?」と。最大の困難は自分の心の中にあります。

 生存と圧力のためにマーケットの意思に従うか、それとも生命と尊厳のために闘うか。「薬の神じゃない!」は、映画人の尊厳にかかわる作品です。私はこれまで一貫して現実主義の映画を撮ってきました。私たちが子供のころから受けてきたのはすべて現実主義の教育です。ロマン主義表現主義を学んだことはなかった。だから、そのことがバレないように格好つけていました。

 でもこの映画は特別です。「慈悲」をテーマの一つとして描き、人々にプラスのエネルギーを与えます。それは私にとって、映画がヒットした以上に重要なことです。

シュー・ジェン 1972年4月18日、中国・上海生まれ。俳優、監督、プロデューサー。94年に上海演劇学院を卒業。2006年、アンディ・ラウが製作総指揮の「クレイジー・ストーン翡翠(ひすい)狂騒曲」に出演。12年には監督を務めた「ロスト・イン・タイランド」で12億6000万元を超える大ヒットを記録。「薬の神じゃない!」では、第55回金馬奨・最優秀男優賞など多くの賞を受賞した。主な出演作に「夜店」(09年)、「帰れない二人」(19年)など。

ニン・ハオ 1977年9月9日、中国・山西省生まれ。監督、プロデューサー。北京師範大学と北京映画学院を卒業。2001年に「星期四、星期三」で北京大学学生映画祭・最優秀監督賞を受賞。「クレイジー・ ストーン翡翠狂騒曲」では、中国映画メディア賞最優秀監督賞、第43回金馬奨・監督賞などを受賞。日本では監督作「モンゴリアン・ピンポン」(05年)が公開されている。

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「薬の神じゃない!」の一場面=(C)2020 Cine-C. and United Smiles Co., Ltd. All Rights Reserved

上映情報
【薬の神じゃない!】

新宿武蔵野館(東京都新宿区)、池袋シネマ・ロサ(東京都豊島区)、センチュリーシネマ(名古屋市)、シネ・リーブル梅田(大阪市)、ユナイテッド・シネマ福岡ももち(福岡市)などで公開中、ほか全国順次公開

公式ウェブサイト :http://kusurikami.com/

https://mainichi.jp/articles/20201029/k00/00m/040/185000c