朝鮮半島における「植民地の公共性」

内容的にちょっと気になる論集が『朝鮮日報』日本語版サイトで紹介されていたので、クリップしておきます。

記事入力 : 2010/08/01 10:54:23
親日反日のグレーゾーンに存在した「公共領域」(上)
「植民地の公共性」を分析した尹海東教授

 日帝時代を、親日反日の二分法を超えた「植民地近代」として把握することを主張してきた尹海東(ユン・ヘドン)成均館大HK教授(HKとは、韓国政府の人文学振興プロジェクト「人文韓国〈Humanities Korea〉」の略称)=51=は最近、編著書『植民地の公共性』(本と共に社)を出版し、同書の中で、植民地にも公的領域が存在し、公共の利益のために繰り広げられた社会運動があったことを分析した。2003年に著書『植民地のグレーゾーン』(歴史批評社)で「植民地の公共性」という概念を初めて学界に提示した尹教授は、今回の編著書に、自らの見解に共感する韓国と日本の少壮学者12人が書いた論文を収録した。韓国のファン・ビョンジュ国史編さん委員会編史研究士、キム・ヨンミ国民大教授、ソ・ジェギル・ソウル大奎章閣韓国学研究院HK研究教授、そして日本の並木真人フェリス女学院大教授などが参加した。

 尹教授は、「“植民地の公共性”とは、植民当局に対する抵抗と協力が交差する地点に存在するもので、日帝時代の行政機関移転反対運動のように、公共の利益を確保するため行われる日常の政治的な側面」と定義した。尹教授によると、1920年代後半から忠清南道公州で繰り広げられた忠清南道庁移転反対運動は、「植民地の公共性」の好例だ。由緒ある公州から新進の大田に忠清南道庁を移転しようとする総督府の計画に対し、公州地域の住民らは、陳情やデモといった手法で反対運動を展開した。この運動に日本人、朝鮮人という民族の区別はなく、地域の有志や商工業者らは、日本政界の有力者まで巻き込んで総督府を苦しめたという。尹教授は、「この運動は当時、朝鮮人たちの日常的経済・社会生活の中で繰り広げられた重要な運動だった。独立運動ではないから意味がない、と無視してはならない」と語った。

http://www.chosunonline.com/news/20100801000024

記事入力 : 2010/08/01 10:54:28
親日反日のグレーゾーンに存在した「公共領域」(下)
「植民地の公共性」を分析した尹海東教授

 本書に収録された論文「日帝時代の都市の上水道問題と公共性」(キム・ヨンミ執筆)は、植民地期の京城(現ソウル)地域における、上水道普及をめぐる植民当局と朝鮮人の争いを取り上げた。1920−30年代に普及した上水道の主な顧客は日本人だった。井戸水や川の水を飲んでいた朝鮮人は、1920年コレラの流行で多くの死者が出たことを受け、陳情書の提出や報道機関を通じ、植民当局の差別的な上水道政策を批判、集団行動を繰り広げた。この過程で、水道の恩恵の民族的差別や高い水道料金など、京城府の反公共的性格を批判し、水道をめぐる住民の闘争は合法的抵抗運動を生む重要な土台になったという。また、論文「植民地期の朝鮮語放送と植民地の公共性」は、「植民地期の朝鮮語放送では、昼間は内鮮一体のプロパガンダが行われる一方、夜になると、パンソリや民謡といった音楽が朝鮮八道に鳴り響いた。朝鮮語放送は、植民者と被植民者の“妥協”の産物で、一種の“植民地の公共領域”として存立していた」と評価した。

 尹教授は、「植民地の公共性」をめぐる議論が、植民地期の経済成長に注目する「植民地近代化論」と、一方的な搾取を強調する「収奪論」のどちらとも異なるとして、一線を画した。一部の植民地近代化論者が提示する統計数値の中には、政治的差別が見られず、また植民地を野蛮で特殊な収奪社会としか見ないのも、実情に合わないというわけだ。尹教授は、「これまで、植民地の公共性を概念的にかなり研究してきたが、今は事例を挙げ、具体化しようと思っている。最近は、総督府権力の性格と朝鮮人の暮らしとのかかわりなどについて、資料を調べている」と語った。

 しかし、「植民地にも公共性があった」という主張は、場合によっては日帝の植民支配を美化する結果にならないだろうか。こう指摘すると、尹教授は、「そうした認識は誤読の結果だ。強い政治的立場だけを表に出せば、植民地の全体像を見ることはできない。抵抗と協力が交差するグレーゾーンに生きた、普通の人々の暮らしの複雑さを見なければならない」と答えた。

李漢洙(イ・ハンス)記者

http://www.chosunonline.com/news/20100801000025

目次を見ると、こんな感じで各論考が並んでいます。

목차

책을 엮으며 왜 식민지 공공성인가?―공공성의 딜레마를 넘어서

1부 식민지 공공성―이론적 탐색
식민지 근대와 공공성: 변용하는 공공성의 지평 _윤해동
식민지 시기 ‘공’ 개념의 확산과 재구성 _ 황병주
새로운 식민지 연구의 현주소―‘식민지 근대’와 ‘민중사’를 중심으로 _허수
식민지기 조선에서의 ‘공공성’ 검토 _ 나미키 마사히토(竝木眞人)
‘파시즘적 공공성’의 내파와 재건 _조관자

2부 도시ㆍ지역사회와 식민지 공공성
일제 식민지 경성부 교외 지역의 전차 문제와 지역 운동―1932~33년 전차 교외선 폐지 반대 운동을 중심으로 _김제정
1920~30년대 차지ㆍ차가인 운동을 통해 본 ‘저항’과 ‘적응’의 교차 지점 _염복규
일제 시기 도시의 상수도 문제와 공공성 _김영미
1920~30년대 보통학교와 지역사회 _이기훈

3부 식민지 공공성과 근대성의 여러 양상
식민지 시기 조선어방송과 ‘식민지 공공성’ _서재길
경계에 선 고아들―고아 문제를 통해 본 일제 시기 사회사업과 공공성 _소현숙
1910년대 일제의 공동묘지 정책과 조선인의 경험 _장용경

http://www.kyobobook.co.kr/product/detailViewKor.laf?ejkGb=KOR&mallGb=KOR&barcode=9788991221659

なお、日本からこの本に論文を寄せている並木真人氏については、こちらの本に共訳者として名前が見えます。

帝国のはざまで―朝鮮近代とナショナリズム

帝国のはざまで―朝鮮近代とナショナリズム