名残惜しき京春線

現代韓国でこういうノスタルジーを感じる機会はそんなにありませんが、それだけ多くの人のいろいろな思い出が刻まれた路線だったということでしょう。

一度だけでも乗れてよかったです。

記事入力 : 2010/12/21 15:16:12
京春線:春川行き列車との別れを惜しむ市民たち
「ムグンファ」号が運行廃止

 「お客様、座席は一杯なので、立席しかありませんが」

 「最後だから仕方がないね。立席で春川へ行って、マッククス(そば粉を使った冷めんの一種)を食べて帰ってこよう」

 20日午前8時、清凉里駅(ソウル市東大門区)の待合室は、この日を最後に運行が廃止される京春線の「ムグンファ(むくげ)」号に乗ろうとする人たちでにぎわっていた。「京春線 立席のみ販売中 午後4時以降は座席もあり」という案内文が張り出された切符売り場の前には、たとえ立席でも切符を買おうという人たちが、10メートルほどの列に並んだ。韓国鉄道公社は今月18日から、臨時列車を上下1本ずつ運行したが、この日午前に清凉里駅から南春川駅へ向かう列車11本と逆方向の列車7本は、すべての座席が売り切れた。1939年の開通以来、71年間にわたって運行されてきた「春川行きの列車」は、21日の京春線の複線電化開業により、その歴史に幕を下ろした。

 仁川市富平区に住むパク・ビョンスクさん(64)はこの日、友人たちとムグンファ号に乗るため、朝6時30分に起きた。パクさんは「女子高校時代に旅行したとき以来、昨年久しぶりに京春線を利用したが、(ムグンファ号の運行が)廃止されると聞いて、思い出の列車に最後にもう一度乗ろうと思った。友人が列車内でブルーベリーのお酒を飲もうと言うので、わたしは豚足を用意してきた」と話した。また、春川に住み、ソウルで勉強するため、2週間に1回ずつ京春線を利用してきたというパク・チャンジェ君(16)は、「きれいな景色を眺められる京春線(のムグンファ号)にもう乗れなくなると思うと残念だが、1時間ほど速くなるのはうれしい」と話した。

 結婚以来、約40年ぶりに妻と列車で春川へ行くというイ・ヨンリムさん(68)は、普段は車で旅行に出掛けるが、この日は「(京春線のムグンファ号に)きょう乗らなければ、二度と乗る機会がなくなると思い、最終日に列車に乗った」と語った。約40年前、列車の中で食べたゆで卵をもう一度食べようと、昼食を抜いて来たというイさん夫妻は、「昔は汽車の中で一緒に食べるのが当たり前だったが、最近はそんな光景もなくなったようだ。40年前は生きていくだけで精一杯で、心に余裕がなかったが、今回は食べることを楽しみたい。古いものを保存しようという外国のように、韓国でも京春線のような列車を保存すればいいのに」と話した。

 大学時代、友人たちと学生集会に向かうため、カセットテープに録音した音楽を聞きながら京春線でソウルに向かったというハン・ジェウクさん(35)は、生後8カ月の息子と一緒にムグンファ号に乗った。「息子がすぐには分からなくても、大きくなったとき、両親と一緒に京春線の最後の列車に乗ったということが、いい思い出として残ればいいと思う」と話した。


20日午後、ソウル・清凉里駅から南春川駅へ向かう急行「ムグンファ(むくげ)」号の前に市民が集まり、記念写真を撮っている。1939年の開通以来、71年間にわたって運行されてきた「春川行きの列車」は、京春線の複線電化開業により、この日で運行が廃止された。/写真:イ・ジュンホン客員記者

春川=ソン・ウォンヒョン記者

http://www.chosunonline.com/news/20101221000058