政治に先行する現実

先日のアジアカップに関連して、『聯合ニュース』が書いたこの記事。現在の「在日コリアン」のアイデンティティのあり方というのは、様々な「政治」の結果を前提としたものではありますが、そうした「政治」が意図した何ものかを体現しているわけでは必ずしもない、と思います。

そんな中で政治にできることはおそらく、現実を後追いで認め、それに歩を合わせていくことくらいしかないのではないでしょうか。もちろん、国家には国家の都合というものがあるでしょうが、そんなに何でも思い通りにやれるわけではありません。

李忠成が一石投じる、迫られる在日政策の転換
2011/02/02 16:13 KST

【東京2日聯合ニュース】サッカーのアジアカップ決勝戦で決勝ゴールを決めた在日韓国人李忠成(リ・タダナリ、サンフレッチェ広島所属)選手が自分のブログに書いた「僕にとって祖国は日本・韓国の二つです」という発言が在日コリアンの間で話題になっている。在日社会の意識変化を鮮明にみせているためだ。韓国政府の海外同胞政策もこうした変化を見逃してはならないとの声が出ている。


在日韓国人4世のサッカー日本代表、李忠成選手=(聯合ニュース)

 元プロ野球選手で野球評論家の張本勲氏は在日2世で、プロサッカー選手の朴康造パク・カンジョ)選手や鄭大世チョン・テセ)選手は在日3世、李忠成選手は在日4世になる。だが、日本で生まれ育った彼らの人生は自分が選択した国籍によって大きく変わった。

 張本氏は韓国球界とも深くかかわった。サッカーの3選手は、朴康造選手が韓国代表鄭大世選手が北朝鮮代表、李忠成選手が日本代表となった。

 専門家によると、ひと昔前の世代では韓国と北朝鮮、日本の中でどの国を選ぶかが重要な問題だっただけで、「在日」のアイデンティティーを前面に出すのを敬遠した。このため、自分が「在日」といことを隠す人も少なくなかった。日本プロ野球界にはたくさんの在日がいるが、張本氏のように韓国人だということをオープンにしている選手は多くない。

 若い世代も国籍の選択に直面するのは同様。だが3サッカー選手は自分が「在日」ということを隠さず、積極的にアピールしている。日本籍を取得したにもかかわらず、韓国名の漢字をそのまま使っている李忠成選手が代表的なケースだ。日本メディアに出演し、自分の出自を堂々と明かした。

 こうした意識の変化は在日社会の全体にも見える。在日同胞の意識変化を研究してきた大阪市立大学朴一教授によると、40〜50代の在日2、3世までは自ら進んで、または仕方なく日本に同化し、これによって毎年1万人余りが日本に帰化する結果につながった。だが、20〜30代の在日4世は韓国の名前を使う頻度や、母国語に対する理解度が高いという。背景には日本社会が在日の中で韓国籍者を積極的に受け入れ始めたことがあると説明する。

 だからといって、彼らは前の世代のように本国(韓国か北朝鮮)に寄りつくわけでもない。朴教授は「若い世代は韓国と日本の両方にかかわっているが、どちらでもない在日人とのアイデンティティーを強く感じている」とみている。

 若い在日に将来について尋ねたところ、「日本国籍を取得し、日本人として生きていく」との回答は4%にすぎなかった。半面、「韓国籍(もしくは朝鮮籍)のまま、在日として生きていく」との回答は60%に上った。

 在日本大韓民国民団(民団)の幹部も「いつかの日かすべての在日が日本人になるという予測は違った。在日は少なくとも20〜30万人を維持するだろう」と話す。

 これを踏まえ、朴教授は韓国政府が昨年に国籍法を改正し、二重国籍対象者の基準を拡大したことを指摘し、在日韓国人にも二重国籍を認める必要があると主張する。二重国籍を許容すれば、在日韓国人参政権問題も解決し、両国をつなぐ大切な資産となる在日同胞全体を包容できると説明した。

 だが、一部の専門家は南北に分かれている朝鮮半島で、二重国籍を全面的に拡大すれば、兵役をめぐる混乱が生じる恐れがあると懸念する。

 海外僑胞問題研究所の李求弘(イ・グホン)理事長は「韓国政府が在日韓国人がいつかは日本国籍を取得すると考えながらも、残った人は韓国政府に従ってほしいと要求している。これでは、在日韓国人全員から背を向けられる恐れもある」と指摘する。

 国籍を唯一の判断基準に定め、日本国籍を取得した人は同胞から排除し、朝鮮籍を選んだ人には「親北」と非難する態度では、「在日韓国人」とのアイデンティティーを強く感じている若い世代を受け入れられないという。李理事長は「国籍ではなく、民族を基準とし、同胞政策を実施する必要がある」と強調した。また、在日韓国人の韓国語教育に予算を積極的に編成するなどして、韓国と日本をつなぐ人材を養成することが求められると述べた。

http://japanese.yonhapnews.co.kr/relation/2011/02/02/0400000000AJP20110202001600882.HTML

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かつて、ソビエト連邦中央アジアでやったようなことができる時代環境でもないですしね。

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