ヌートリア、ヌートリア
すみません、누트리아でちょっと思いついただけです。CNBLUEとは特に関係ありません。
この記事が引っ掛かったのはたぶん、「京都古来の自然環境」を守るために、「ヌートリアは根絶させることが必要」だというくだりのせいでしょう。
生きているだけで特に本人に罪があるわけでもない生き物に対する「根絶」という言葉の強さが、気になります。もちろん生態系保全や農業被害の問題はありますから、「捕獲」や「駆除」という話は出てくるでしょうが、そこまで問答無用で根絶やしを目指さんとあかんのでしょうかねえ。
「自然環境」という大義名分のために「ただ殺すために殺す」という図式は、あまり素直に頷けません*1。このお話のアニメーションをヌートリア目線で作ったら、さぞや不条理な展開が描けるでしょう。
ヌートリア:癒やし系があだ? 鴨川にじわり侵出で駆除計画
2013年07月24日
滋賀県大津市の大戸川で捕獲されたヌートリアの親子=2012年6月、県提供
餌やりの禁止を知らせるため府などが河川敷に設置した看板=京都市上京区で2013年6月29日午後5時47分、松井豊撮影南米の河川に生息する特定外来生物「ヌートリア」が京都市民の憩いの場、鴨川にじわり侵出している。鴨川を管理する京都府と京都市は、6月以降、タッグを組んで捕獲に向けた動きを本格化させた。カビパラに似たぼうっとした顔が「癒やされる」と評判で、鴨川では餌やりをする人が絶えない。そんなヌートリアの実態とは−−。【松井豊】
ヌートリアは成獣で50〜70センチ、体重4〜5キロ。尾の長さは35〜50センチある。20世紀初めに上野動物園に初めて輸入され、39年から軍服に使う毛皮獣として日本各地で積極的に養殖された。しかし、終戦で毛皮の需要が落ち、養殖場が閉鎖。養殖されていた個体は自然界に放され、主に西日本に定着した。府内では北中部を中心に多くの目撃情報が寄せられている。
夜行性で、水辺の植物の葉や茎、地下茎を食べ、比較的流れが緩やかな場所の周辺に巣穴をつくり繁殖する。泳ぎを得意としており、5分程度の潜水も可能という。天敵がいないのに加え、年に2〜3回、1回あたり2〜6頭出産するため爆発的に繁殖する。西日本では、水田の稲や畑の根菜を食い荒らす被害が報告されている。
鴨川では、2011年秋ごろから目撃情報が増え、インターネット上に動画や写真がアップされるようになった。今では、出町柳の三角州「デルタ」の辺りまでヌートリアの生息範囲が広がっている。ただ、どれくらいの個体数がいるのか、調査が追いついていないのが現状だ。
鴨川に生息する小魚のタナゴが産卵時に利用する二枚貝をヌートリアが食べてしまい、小魚を餌とする生物に影響が出て食物連鎖が崩れる恐れがある。また、中州に巣穴を作るため、野鳥の営巣場の縮小にもつながる。
ヌートリアの勢力拡大に危機感を持った府は12年11月、鴨川を含む府全域を対象にヌートリアの防除(捕獲・駆除)計画を策定。あらかじめ認定された人が「箱わな」などを岸辺に仕掛けて捕獲し、安楽死させて数を減らす計画だ。
捕獲・駆除計画に対し、「人間の都合で外国から連れてきた動物を人間の勝手で殺すのはおかしい」などの意見が京都市に複数寄せられているが、市の担当課は「鴨川の生態系を守ることが最も大切。鴨川を管理する府と協力して防除計画を立てたい」と話している。
府の外来生物専門委員会の座長を務めた京都大理学研究科元講師の村上興正さん(74)=保全生態学=によると、英国では、ヌートリアが岸辺の在来植物を根こそぎ食べてしまうとして、50年には20万頭いたヌートリアを81年からの9年間で根絶させた。村上さんは「希少種以外の在来植物は守らなくてもいいとの意見もあるが、これはおかしい。希少種でなくても、外来種に食べられれば、在来の生態系が壊れる。京都古来の自然環境を守るため、鴨川のヌートリアは根絶させることが必要」と話している。
http://mainichi.jp/select/news/20130724mog00m040013000c.html
まあ、実際問題として、京都府と京都市との間でもイマイチ足並みが揃っていないようですし、鴨川ということは淀川水系全体にまたがる話ですから、京都だけで「根絶」というのは難しいような気がします。
鴨川に生息し、河川敷に上がったヌートリア(2012年8月15日、京都市上京区・葵橋下流)京都市内の鴨川に近年生息し、生態系を破壊する恐れがある特定外来生物「ヌートリア」の対策をめぐって、京都府と京都市が対立している。河川管理者の府は早期の捕獲を目指したいが、市は「市民の反発が予想される」として農業被害が出るまでは静観する姿勢。ヌートリアはさまざまな植物を食べ繁殖力も高いため、専門家は捕獲の必要性を指摘するが、現状では府が餌やり禁止を呼びかける程度にとどまっている。
府が鴨川でヌートリアを確認したのは2年前。淀川や桂川から移り住んだとみられ、現在は北大路橋(北区)や高野橋(左京区)まで北上している。
「かわいい」と餌を与える住民もおり、繁殖を恐れる府は昨年6月、河川敷に看板を設置するなどして餌やりの禁止を呼びかけている。府自然環境保全課は「鴨川の生態系を守るためには捕獲が必要」と強調する。
一方の京都市。環境管理課や林業振興課は「鴨川は鳥獣保護区でもあり、捕獲は市民の反発が予想される。市民の要望もない。ヌートリアが生態系を乱しているという証明も難しい」と捕獲に消極的だ。
特定外来生物を捕獲する場合、生息地の市町村や住民団体が防除計画をたて、国の認定を受けて実施するのが一般的で、鴨川での捕獲は京都市の協力が必要になる。
しかし、市は当面、農作物被害が出ている桂川水系や山科川での捕獲を優先する意向で、府市の隔たりは解消されそうにない。
ヌートリアに詳しい村上興正京都精華大非常勤講師は「草食なのに貝も食べるようになっており、生態系が大きなダメージを受ける可能性もある。市の腰は重いが、今ならまだ根絶は可能で早期に捕獲すべき」と指摘する。
一方、いきもの多様性研究所(中京区)の小山直美副代表は「いないほうが良いが、持ち込んだ人間の責任であり、避妊など少しでも殺さない対策にも取り組むべきでは」と話す。
【 2013年05月17日 15時20分 】
京都市は3日、鴨川などで繁殖する特定外来生物ヌートリアを捕獲するため、外来生物法に基づく防除実施計画を近く策定する方針を決めた。市はこれまで、農作物への被害がないことから鴨川のヌートリアの対策に消極的だったが、生態系保全のため捕獲が必要と判断した。
計画で、可能な限り頭数を減らすための有効な捕獲方法や捕獲を実施する団体などを定める。計画が国に認められれば、定められた団体が市内全域で自由に捕獲できるようになる。
現在は農作物被害が発生してから猟友会が市の許可を得て捕獲しているが、計画策定で素早い対応が可能になり、増殖を防ぐことができるという。
市内のヌートリアの個体数が不明なため、年間の捕獲頭数目標や予算額は今後検討し、鴨川を管理する京都府とも連携する。市林業振興課は「鴨川は川幅が狭く人目に付きやすいので捕獲オリの設置は難しいが、生態系保全のため、しっかり取り組みたい」としている。
ヌートリアは繁殖力が高く生態系への影響が大きい。農地ではダイコンやイネなどを食べるため、市は昨年度、害獣として桂川や山科川などで41頭を捕獲。
鴨川では数年前から確認され、生息域が田畑のある地域の近くまで北上していたが、対策は府が河川敷に餌やり禁止の看板を設置する程度だった。
【 2013年06月03日 22時49分 】
http://www.kyoto-np.co.jp/environment/article/20130603000153
ちなみに、こちらのブログ記事によると、ヌートリアのお肉、食べれるどころの話ではないみたいです。
驚愕の味、ヌートリア - ジビエ料理&ハンティングのシェフブログ
*1:そもそもが毛皮採取用に輸入され、食用にも用いられる動物ですが、そっち方面への話がなぜ出てこないか不思議です。