福知山は大学都市になれるのか:福知山公立大学と京都工芸繊維大学

話には聞いていましたけど、かつての京都創成大、現在の成美大の公立大学化がついに認可されたとのことです。ちなみに、福知山市が単独で引き受けるのであれば、「福知山市立大学」でよくはなかったですか?


京都府福知山公立大を認可 学長に井口氏起用へ


公立大学法人設立の認可書を山田府知事から受け取る福知山市松山市長(左)=24日正午過ぎ、京都市上京区府庁

 京都府は24日、成美大を公立化する「福知山公立大」について、福知山市が申請していた運営母体の公立大学法人設置を認可し、市が目指す来年4月の開学が決まった。市は、法人理事長を兼ねる初代学長に元府立大学長の井口和起氏(75)を起用する。

 京都市上京区府庁で、山田啓二知事が福知山市の松山正治市長に認可書を手渡した。午後には、大学の設置者を公立大学法人に変更し、土地・建物も寄付する認可を文部科学省から受けた。

 理事長兼学長の任期は、来年4月から4年間。井口氏は、福知山市出身で京都大卒。日本近現代政治史が専門で、府立大の教授や学長、府立総合資料館長を歴任し、同館顧問。市が設置した公立化の検討会議委員長も務めていた。

 運営計画によると、福知山公立大は現在の成美大と同じ地域経営学部の1学部2学科(定員1学年50人)でスタートし、2020年度には定員を200人にする方針。00年開学時の京都創成大(当時)を含めて定員割れが続いており、公立化後も学生確保や大学経営の安定化が課題となる。

【 2015年11月24日 15時10分 】

http://www.kyoto-np.co.jp/education/article/20151124000069

福知山公立大は、学部編成をとりあえず成美大から引き継ぐようですが、隣接地に京都工繊大が進出することがどう絡んでくるか、両者がどんな特色を打ち出せるのか、今のところはまだ未知数です。

「地域創成」をテーマに理系の京都工繊大が進出し、福知山公立大が人文社会系を引き受けるんでしょうけど、ビジネスデザイン学科・医療福祉マネジメント学科という現状の2学科体制では、地方行政関連の分野に弱みがあるような気がしますねえ。その点、初代学長がかつていた京都府立大とも、何か連携する余地があるかもしれません。

両丹日日新聞2015年9月 4日のニュース
国立京都工芸繊維大が福知山キャンパス概要発表

 国立大学法人京都工芸繊維大学京都市左京区)は、福知山市西小谷ケ丘に設置する「福知山キャンパス」を活用した新学部プログラムの開設に向け、具体的な準備を進めている。来年4月に開設する予定で、プログラムの概要や学生の募集要項を発表した。

 新学部プログラムは、「地域創生TechProgram(テック・プログラム)」と命名。開設については、すでに文科省の了解を得ているという。

 プログラムには、バイオ・材料化学▽メカトロニクス設計▽デザイン・建築の3コースがあり、いずれも1回生から3回生の前期までは、左京区の松ケ崎キャンパスで、一般教養や専門基礎力を身に着ける。

 3回生の後期からは、旧福知山女子高校の校舎を活用した福知山キャンパスに拠点を移し、地域課題をテーマにした学習のほか、地元企業でのインターンシップなどを行い、実践的な体験を積む。

 また市が来年4月に開学を目指す福知山公立大学との連携も視野に入れており、両大学の文理系でのワークショップなどに共同で取り組んでいく。

 これらにより、産業の活性化や地域課題の解決に向け、協働できる技術者やリーダーになれる人材などを育成する。さらには、若者の地元定着、府北部の活性化にもつなげていきたいという。

■AO入試に地域枠■

 入学者選抜の定員は、AO入試20人と一般入試10人で、合わせて30人。AO入試では、一般と社会人のほか、府北部5市2町の高校生らを対象とした12人の地域枠も設ける。

 京都工芸繊維大の森迫清貴副学長は「府北部の若者がいったん京都に出て、専門知識をしっかり身に着けた上で、地元に戻ってくる−という流れを作り、地域活性化に貢献できる人材を育成したい。今後は、地域枠を増やすことも検討していきたい」と話している。

写真=来年度から新学部プログラムを開設する京都工芸繊維大学京都市左京区

http://www.ryoutan.co.jp/news/2015/09/04/009564.html

京都創成大/成美大の「失敗」は重い事実としてのしかかってきていますが、他に4年制大学のない京都府北部地域にはこの公立大学が成功するだけのポテンシャルがあると思います。公立大学として守り育てることで他地域の「成功」例に続けるよう、期待したいと思います。

「地方私立大学の公立化」という選択

成美大の公立化 特色づくり、再生の鍵に
北部総局 秋田久氏


成美大の掲示板に掲げられた公立化をPRするポスター(福知山市堀)

 福知山市は来年4月から成美大を福知山公立大(仮称)として再出発させる取り組みを進めている。開会中の市議会に関連議案を提出しており、特別委員会で可決された。本会議で可決されれば文部科学省京都府に公立化の手続きに入る方針。少子化で学生確保競争が激化する中、地方大学としての特色を打ち出せるかが生き残りの鍵だ。

 本年度の1年生は定員50人に36人。成美大の危機的状況を物語る。2000年に京都創成大(当時)として開学し、公私協力方式で市が27億円を投じたが、一度も定員を満たさずに経営危機に陥った。運営に失敗した旧経営陣に加え、巨額の公金を投じながら大学の悪循環を改善してこなかった市の責任も重い。

 有識者の検討を経て私立大の公立化にかじを切った市。松山正治市長は「人口減少の中で地元で学び、働く人材を育てる。教育のまち福知山が実現できる」と市議会で意欲を語った。福知山市の13年度の大学進学率は44・4%で府平均より14・1ポイント低い。自宅から通える希望の大学がなく、都市部の大学進学は下宿など経済負担も重いためと市はみており、進学率の低さを地方大設置の理由に挙げる。

 一方で、市民からは財政問題への懸念や成美大失敗への不信感を理由に、公立大新設に反対したり延期を求めたりする声は根強い。2年連続の水害で財源に余力は無い。市は大学開設4年間で計8億円の赤字後に黒字化すると試算するが、最終的な定員(200人)が確保できなければ赤字幅は拡大してしまう。

 時間的な制約もあって初年度から学部刷新を打ち出せず、成美大の教学内容を引き継ぐ結果になった。市の作った公立大のパンフレットには「日本初!フィールド研究重視の実践的教育システム」をうたう。特色として苦しさは否めない。長期的には防災や観光を検討するが、本当に学生が集まるかは未知数だ。優秀な教授陣や学生の就職先の確保に骨を折る必要もある。

 奮闘している地方の公立大もある。秋田県が04年につくった国際教養大(秋田市)。講義はすべて英語での少人数教育や海外留学の義務化を行い、大手企業を含む就職内定率は100%という。私大から公立大に転身した高知工科大なども定員を確保している。だが、大学評価の第三者機関から「不適合」判定を受けたことのある成美大からのV字回復は容易ではない。

 大学の特色づくりや学生確保には府北部の市町の協力は欠かせない。近隣の建物に進出する京都工芸繊維大との連携も注目される。

 人口増か、財政負担増か、もろ刃の剣とも言える公立大。初年度の志願者数は松山市政の評価を決め、来年の市長選にも影響する。ピンチをチャンスに変えられるか、注視し続けたい。

[京都新聞 2015年9月23日掲載]

http://www.kyoto-np.co.jp/kp/rensai/syuzainote/2015/150923.html