上海市龍華殯儀館・その2:殯葬業の市場経済化を身をもって知る。

昨日の続きです。

上海殯葬博物館は業務綜合楼の5階。では、その他のフロアに何があるかと言えば、1階はロビーを中心に事務室・各種受付・殯葬用品の展示販売スペースなどがあり、2階から4階は、焚香室とでも言えばいいのでしょうか、そのような区画されたスペースが大半を占めています。



その中で、2階に「公墓办事处(弁事処)」なる一角がありました。

5階の博物館の見学を終えて、階段で2階まで差しかかった時、通路スペースにパンフレットのようなものを挿してあるラックを見かけたのです。で、何かの参考になるかと思ってそちらに足を向けたところ…。

もうほんとに一斉に、そこらじゅうの事務所からおばちゃんがわらわらと出てきて、私は囲まれてしまいました。

要は、お墓のセールスなわけです。こちらが口を開く前に、「ウチの公墓は広くて高級感がある」とか「ウチのところは海から近くて眺めも環境も最高だ」とか、そんなセールストークが四方から飛んできて、「学习」のために立ち寄っただけの外国人だということを説明して理解してもらうまでに、かなりの時間を要してしまいました。

それを言ったら言ったで、「ウチのこのパンフレットをあげるから持って行け」とか「このパンフレットは汚れてるから新しいのを持ってきてあげる」とか、さらにひとしきりわたわたした挙句に、いろいろ持たされてようやく解放されました。

改革開放による市場経済の導入において殯葬業が例外であるはずがないこと、頭では理解してなかったわけではないのですが、竜巻に巻き込まれたような予想外の体験を通じて、それがどういうことかを少しだけ垣間見ることができた次第です。

Ryukoku University Institutional Repository - 中国の殯葬改革と殯葬の市場化

龍華殯儀館の入り口付近に多数掲げられているこうした看板は、ダテではありません。



もらったパンフレットを見てみると、高級感や環境の良さのアピールがガンガン前面に出てくるつくりになっていますし、高級なお墓の豪華さはかなりのものです。また、墓域や墓碑、さらには葬法そのものの多様化も相当に進んでいて、まさに「ピンからキリまで」という感じです。金次第で、いくらでも豪勢な差別化ができそうです。

http://www.haiwanyuan.com/

http://www.syszly.com/

http://www.shhuaxiagongmu.com/

殯葬博物館では、1920-30年代の上海における殯葬業の畸形的繁栄と、解放後の殯葬改革、という流れを見てきたのですが、それを受けてのこの現在。市場経済のど真ん中を行く「発展」ぶりは、何だか皮肉な気がしますねえ。