「嫌韓」に吹き飛ばされぬ「共感」:中日新聞のK-Pop論

何だか久しぶりに真正面からのK-Pop論を見た気がします。個々の分析や評論には異論がないではないですけど、社会のある階層からは見えないところで、今までにない形で定着しているのは確かなことです。

思えば、私がKARAを初めて知ったのが2009年の初め、劇団ひとりが「嵐の宿題くん」でKARAを熱く語ったのが2009年12月。BoA東方神起はその前から日本で活躍していましたけど、ともかく十年して一回り、改めて振り返りつつ語り直される、そんな時期なのかもしれないですね。現在、極私的にはちょっと端境期に入っていて、防弾少年団やTWICEは追い切れていません。

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日韓関係のこじれやいわゆる「嫌韓」を吹き飛ばすかどうかは知りませんが、日韓関係や「嫌韓」がどうであれ、そう簡単には吹き飛ばされない根を張りつつあるとは言えるでしょう。たぶん、旧世代が思っている以上に、根付いてますよ。

2019年12月14日
共感で嫌韓を吹き飛ばす予感 K-POP、止まらぬ引力

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MAMAで楽曲を披露するBTS。2018年の日本での公演動員数は37万人(推定)とされ、K-POP勢では、国籍を問わず全てのアーティストを通じて1位の128万人(推定)を集客した東方神起に次ぐ人気だった=名古屋市東区ナゴヤドームで、CJ ENM提供

 日韓関係が冷え込む中、韓国発の若者向けのポピュラー音楽「K-POP」が、日本で多くの若者を引きつけている。女性を中心とした10~30代のファンが、男性7人組のBTS(防弾少年団)や女性9人組のTWICEなどに熱い声援を送る。米欧のヒットチャートで上位を占める楽曲もあり、政治の対立を超えて人々を魅了。K-POP人気の背景を探った。

 四日夜、名古屋市ナゴヤドーム。グラウンド中央の舞台にBTSの七人が現れた。四万人が詰めかけた観客席から「キャー」という絶叫が無数に飛ぶ。

 披露した楽曲は「N・O」。きびきびとしたダンスとともに出色の歌詞が心を打つ。「俺たちを勉強するだけの機械にしたのは誰?」「これ以上他人の夢を追って生きるな」といった社会への不信を韓国語のラップで吐き出した。

 韓国の娯楽事業大手「CJ ENM」が、K-POPを中心にアジアの歌手らを表彰する催しの一幕。「エムネット・アジアン・ミュージック・アワード(MAMA)2019」だ。BTSは最高賞を受賞。NHKの紅白歌合戦に三年連続で出場するTWICEなど、他に来場した十四のアーティストを制した。

 リーダーのRMが壇上で「みんなの力になれるように頑張る」と呼び掛けると熱い喝采が。東京から駆け付けた十七歳の女子高校生は「男の子の歌手が、笑っていて急にまじめな顔になる時のギャップに没入しちゃう」と魅力を語った。

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MAMAに登場したTWICE。メンバーは韓国、日本、台湾の出身者による混成で、日本でのアルバムの売り上げは340万枚を超えた。史上最も売れたK-POP女性グループとされる=名古屋市東区ナゴヤドームで、CJ ENM提供

 日韓関係は近年、悪化の一途をたどってきた。二〇〇〇年代半ば以降、日本による朝鮮半島の植民地支配が不当だったとする韓国側の主張への反発などから、「嫌韓」の風潮が強まった。一〇年代には、在日コリアンなどに対してヘイトスピーチと呼ばれる差別的な言論も横行した。

 それでもK-POPは一定の人気を保ってきた。CJ ENMの金顕修(キムヒョンス)・音楽コンベンション事業局長は「歌詞が若い世代にも共感を呼ぶからでは」と指摘する。

 K-POPは、米国で抑圧されてきた黒人の文化を源に、一九九〇年代に台頭したヒップホップに影響を受けている。歌の題材もBTSの社会批判やTWICEの女性の恋心など幅広く、価値観が多様化する現代において、若者がそれぞれの心情を投影できる楽曲を見つけやすい。

 北海道大大学院の金成●(キムソンミン)准教授(音楽社会学)は「日本のファンは、会員制交流サイト(SNS)などを通じて、日本の報道機関があまり報じないK-POPの世界をじかに知る。嫌韓の言論からは比較的に自由な空間を築いた」と説く。

 毎年恒例のMAMAは日本での発信を強化している。主に香港を会場としてきたが、一七年に横浜市で日本初開催。翌年はさいたま市を舞台とした。

 韓国の音楽業界は日本を「アジアで最大の音楽市場。K-POPを受け入れた歴史も長い」(金局長)と重視しているが、政治や人種の壁を越えるK-POPの威力は増している。実際、BTSは一八年に米ビルボード・アルバムチャートで一位を獲得。韓国の音楽事情を知る評論家の飯田一史さんは、地球規模のジャンルになったことを念頭に「米国や、日本以外のアジア圏でファンを増やすことに資金や労力をかけていくのでは」と予想した。

◆歌、外国語…厳しい指導
 K-POPは米国の黒人文化から生まれたヒップホップの「斜に構えたふてぶてしさ」などを洗練させている。

 演出はJ-POPと似た要素がある。美少女や美少年の集団が、歌ってダンスを披露するのは「モーニング娘。」や「AKB48」のほか、ジャニーズ事務所のアイドルグループに通じる。日本語でファンに語りかけ、日本語による歌詞の楽曲も出して共感を呼ぶ。

 日本では「アイドル」として受容されてきたが、米欧では歌唱やダンスの力に秀でた「アーティスト」として評価される。それを可能にするのが韓国の音楽業界独特の歌手養成体制だ。

 歌手の卵が芸能事務所の「練習生」として入所するのは日本と同じだが、指導の厳しさは韓国の激烈な受験戦争を連想させるという。数年にわたり、歌やダンス、演技を猛特訓するだけでなく、英語や日本語などの習得も徹底。日本のファンの間では「歌の質は日本のアイドルより高い」という声もあり、K-POPに求める好みも米欧に近づきつつある。

 (林啓太)

 <K-POPの日本進出> 先駆けは女性歌手BoA。2002年から6年連続でNHKの紅白歌合戦に出場した。05年には男性5人組(当時)の東方神起が本格デビューし、オリコンチャートの上位を占めた。インターネットのニュースサイト「NIKKEI STYLE」によると、18年の国内音楽ライブの年間動員数で上位50以内に入った歌手やグループのうち、K-POP勢の合計は約280万人に達したと推定されている。

※●は王へんに文

https://www.chunichi.co.jp/article/culture/CK2019121402000001.html