北陸新幹線の敦賀延伸が招く福井県の危機

何がどう「好機」なのか、近畿圏から眺めている私にはいまだによく理解できないのです。

こないだ、金沢乗り換えで富山に行ってきましたけど、北陸新幹線延伸後はあれと同じ不便さが、敦賀以北の福井県を襲うってことですよ。

それでも福井はまだいい。たぶんすべての新幹線が止まるでしょうから。福井から先、芦原温泉も、駅があるってことで、福井県外からでもその存在は認知される。既存のJR線とも直結です。問題は、武生・鯖江です。

言うたら悪いですけど南越駅なんて、既存のJR北陸本線からも福井鉄道からも遠く離れてて、新高岡駅上越妙高駅のような在来鉄道によるアクセスのない孤立した場所です。ここで降りたところで、自家用車かタクシーで移動するのが前提でないと、市街地や観光地、どこにも行けなくないですか?

これでサンダーバードしらさぎが減便や廃止にでもされた日には、たまったもんではないです。鯖江のみならず武生も福井もいいところなのに、関西圏からも東海圏からも遠くなります*1。果たしてそれを、北陸新幹線による関東圏からのアクセス向上でどこまでカバーできるか。

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ここはむしろ、富山県以上に*2相当厳しい状況になることを想定しておいた方がいいのではないですか…?

北陸新幹線、福井延伸の好機は 沿線自治体の期待と不安
北陸新幹線5年 北信越の変貌(4)
2020/3/12 2:00日本経済新聞 電子版

「100年に一度の好機」。この数年、福井県内の行政・企業関係者の間で合言葉のように繰り返し使われているフレーズだ。金沢から8年遅れ、2023年春に北陸新幹線敦賀まで延伸する。福井県として待ちに待ったこの好機を観光客の誘致や人口減少対策に生かすべく、県内では官民一体となって様々な計画が進む。ただ、解決すべき課題は山積している。

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南越駅の建設予定地周辺は市街地から離れた水田地帯にある(越前市

「新幹線開通後、観光客は3分の1になったと聞いた。これが未来の鯖江の姿かと驚いた」。鯖江商工会議所の孝久治宏専務理事は数年前、長野県小諸市に視察に訪れた時のことを振り返る。1997年の長野新幹線開通で隣市の佐久平に新幹線駅ができ、小諸市内の小諸駅はJRから並行在来線の運営会社に移管された。

福井県に予定されている北陸新幹線の駅は金沢側から芦原温泉駅あわら市)、福井駅福井市)、南越駅(仮称、越前市)、敦賀駅敦賀市)の4つ。現在金沢と大阪・名古屋を結ぶ特急が停車する自治体で、新幹線の駅がないのは鯖江市だけ。新幹線の延伸後、特急がどうなるのかも未定だ。

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市や商工会議所などは特急の継続や最も近い南越駅の正式な駅名に「鯖江」を入れるよう要望するが、見通しは明るくない。市内の眼鏡製造会社社長は「南越駅でも福井駅でも、車で30分以上掛かる。東京に行くならいっそ鉄道を使わず、小松空港まで車で行く選択肢も出てくる」と明かす。

鯖江市は国産眼鏡フレームで9割のシェアを持ち、越前漆器の産地でもある。孝久専務理事は「ものづくりの街として、新幹線駅がなくても来てもらえるよう産業観光のPRに力を入れたい」とする。

そんな鯖江市の最寄り駅、南越駅(仮称)は1日2千人の利用者を見込む。駅が置かれる越前市は南越駅周辺の振興計画を策定中で、駅周辺の100ヘクタールの土地を観光交流施設のある「交流拠点ゾーン」や先端産業の集積地「未来創造ゾーン」などのエリアに分けて開発を進める計画だ。

越前市中心部にあるJR武生駅とは2キロメートルほど、北陸道の武生インターチェンジからは1キロメートルほど離れる立地。担当者は「交通のハブとなり、越前市を含む丹南エリアの窓口になる」と意気込む。駐車場は約600台を計画し、パーク・アンド・ライドのためのレンタカー店の誘致もしているという。

ただ、駅周辺で現時点で具体的な計画があるのは駅前の道の駅だけ。市はホテル誘致も進めるが、そのほかの周辺のまちづくり構想は数年~数十年単位で進めるとしており、開通には間に合わない。武生駅と南越駅間を結ぶバスなどの2次交通もまだ検討中だ。

思い起こされるのは金沢駅富山駅の間にある新高岡駅。約1.5キロメートル離れた在来線の高岡駅周辺は19年8月に商業の中核だった百貨店の大和が閉鎖し、前後して周辺の書店なども店を閉じた。新高岡駅正面のイオンモール高岡は「新幹線を利用する客の食事や土産の需要を取り込む」と19年秋に増床。新幹線開通後、商業の重心は新高岡駅周辺に移りつつある。

高岡市としても新幹線開業にあわせた新高岡駅高岡駅周辺の整備で財政が悪化し、高齢者の貴重な足となっていたコミュニティーバスが廃止された。地元経済人は「街づくりでメリハリを利かさないまま新幹線を迎えてしまった。(県庁所在地である)富山市との差が大きくなる」と明かす。

在来線と新幹線の駅が隣接する3駅は着実に開発を進める。芦原温泉駅は東京からの観光客の玄関口として、駅舎に福井全体の魅力を体感できる展示をつくり、駅前広場にはイベントスペースを設ける。市の担当者は「芦原温泉に宿泊し、県内を周遊してほしい」と、旅行商品開発や人材育成を急ぐ。

温泉旅館からは「乗り換えが必要になる関西からの客がどこまで減少するか」と不安な声も聞かれるが、あわら市など県内4市町と県境の石川県加賀市などで「越前加賀インバウンド推進機構」を結成し、外国人観光客の取り込みも図る。

福井駅前は外資系ホテルチェーン、マリオット・インターナショナルの誘致が決まり、課題だった駅前再開発の形がようやく見えてきた。終着駅となる敦賀駅でも19年に駅前に立体駐車場が完成、ホテルを含む集客施設も計画されている。「人道の港敦賀ムゼウム」の改築など観光資源の整備少しずつ進む。

福井県では新幹線延伸後、2024年に観光客数を18年度比20%増の2000万人とするプランを策定中。全国45位に落ち込むインバウンド需要も期待する。東京に支社のある県内の上場企業の総務担当者も「東京への出張機会も多く、乗り換えがなくなるのはありがたい」と期待を寄せる。

3年後に迫った「好機」を逃さず、発展につなげられるのか。県をあげて山積する課題を一つ一つ解決していくためには、あまり時間は残されていない。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO56683520R10C20A3962M00/

*1:てことはつまり、関西空港セントレアからも遠くなるってことですよ。インバウンド需要に期待、とか言ってますけどね。

*2:例えば魚津とか、どうなってます?