【大阪の風景】休館直前の大阪人権博物館(リバティおおさか)を見学する。

行ってきましたよ。


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開いてるものと勘違いして先週訪れたときの写真も見ます?





何でも、ちゃんと確認しないとダメですね。

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http://www.liberty.or.jp/img/top/20200522.pdf

この博物館、ここしばらくはご無沙汰していましたが、学生時代からけっこう何度か来てるんですよね。

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「設立趣意書」や館内展示を見てればわかりますけど、この場所にあることを含めた設立の経緯からして、部落解放運動が出発点ではあるのですが、そこから出発して、差別、さらには人権といったより普遍的な観点から幅広くテーマを設定し、現代社会の人権問題を網羅するものとなっています。

設立趣意書

 基本的人権の共有を基本理念のひとつとする日本国憲法が施行されてすでに35年が経過しましたが、わが国には今なお同和問題をはじめその他さまざまな差別に起因する社会問題が存在しています。
 ところで国民的課題としての同和問題解決のために、はじめて法的根拠を与えた「同和対策事業特別措置法」は、期限の延長を含め13年を経過する中で、生活環境の改善などに一定の成果をあげながらも、なお多くの課題を残してこの3月31日に失効いたしました。
 この間、わが国の経済は飛躍的に成長し、産業構造や生活様式は著しく近代化、合理化されましたが、それとともに歴史的文化遺産や景観をもつきつぎに破壊され、わが大阪においても長く息づいてきた、『なにわ』の庶民文化や生活のいぶきの残るものは、数少なくなってきております。
 このような状況の中で、大阪の部落解放運動の勃興期における西浜部落の人達の自立と解放への熱意の結晶である栄小学校の旧校舎もまた50余年の風雪を経て現在その使命を終えようとしており、かつてこれらの有志の人々から寄贈されたこの歴史的遺産を継承し、現在に生かすことはまことに意義深いものがあると考えております。
 一方、今年は「同和対策事業特別措置法」を引き継ぎ、その残された課題、特に今後の同和問題の中心的課題である雇用対策、教育対策及び啓発活動に的確に対応するよう、新しく「地域改善対策特別措置法」が施行されるという、同和問題の解決にとって、いわば新法元年ともいえる年であります。また、わが国の『人権宣言』ともいわれる「全国水平社宣言」が発せられ、これに呼応して大阪における部落解放運動の中心となった「大阪府水平社」が創立されてちょうど60年目という記念すべき年にもあたっています。
 当法人は、この意義ある年にあたり、大阪府・市のご理解を得、かつ各界、各層のご協力、ご参加を得ながら、この大阪の部落解放運動の貴重なモニュメントである旧栄小学校々舎の一部を保存するとともに、これを改修し、仮称「大阪人権歴史資料館」を建設、運営しようと念願するものであります。
 この資料館は、大阪における同和問題を中心とする人権問題に関する資料を『なにわ』の庶民の生活、文化とのかかわりの視点から見つめ直して、蒐収し、保存するとともに、これらを常時一般に公開することによって、同和問題をはじめとする人権問題の生きた教材、学習の場を提供し、広く人権意識の啓発の場として活用ていくものであります。
 府下には、こうした人権問題に関する歴史的資料を保存し、展示する施設がほとんどありません。
 つきましては、当法人の設立の趣旨にご賛同をいただき、格別の協力を切望する次第であります。

1983年4月

http://www.liberty.or.jp/cp_pf/index.html

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改めて、それなりに時間をかけて、特別展示を含むすべての展示を見て回りました。もっとじっくり見たかったところもありますけど、残すところ2日ということもあって見学者も多く、迷惑にならない程度で遠慮しておくことにしました。

ミュージアムショップも混雑してましたねえ。まあ記念品の類もあるんですが、ここの特徴は自館刊行の書籍、しかも図録やブックレットの他にも論文集や研究紀要の存在が目立つことです。昨今の大阪市による攻撃的な冷遇政策で停滞を余儀なくされてきましたけど、本来ここは教育的な展示館にとどまらない、調査研究機関として機能してきたことをうかがわせます。

休館し、この場を立ち退くことになるのは非常に残念ですが、再出発がうまくいくことを願っています。研究機能を持った博物館として、資金面を含む運営を引き受けてくれるところはどこかないですかねえ。本来なら大阪市立大学あたりがまず挙がるべきところですけど、それはまあお話になりません。

大阪人権博物館「最後の公開」6月1日から閉館
[2020年5月25日10時33分]

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大阪市浪速区大阪人権博物館(共同)

大阪市浪速区大阪人権博物館(通称リバティおおさか)が、土地を市に明け渡すことになり、25日、現在の建物としては最後の公開が始まった。土地を所有する市との賃料を巡る裁判の結果、6月1日から閉館する。2022年に別の場所での再開を目指すが、具体的なめどは立っていない。

新型コロナウイルスの感染拡大で3月上旬から休館しており、約2カ月半ぶりの開館。31日までで、開館時間は午前10時~午後5時。入館無料。

同館は1985年、大阪人権歴史資料館として開館した。市が市有地を無償で貸与し、被差別部落在日コリアンハンセン病水俣病など人権に関する史料約3万点を所蔵、展示してきた。

2012年に当時の橋下徹市長が展示内容を問題視。市と大阪府が13年に補助金を全廃し、運営する公益財団法人に対し市が土地の明け渡しなどを求めて15年に大阪地裁に提訴した。

地裁は今年3月に和解を勧告。来年6月までの退去を条件に、15年度からの賃料約1億9000万円を免除する内容で双方が和解する見通しだ。(共同)

https://www.nikkansports.com/general/news/202005250000108.html

大阪人権博物館 31日で閉館
05月29日 15時55分

部落差別をはじめ人権問題に関する資料を展示してきた「大阪人権博物館」が、大阪市から無償で借り受けてきた土地の明け渡しを受け入れ、31日で閉館することになりました。

大阪・浪速区の「大阪人権博物館」、通称「リバティおおさか」は、大阪市などが出資する財団が、部落差別の解消につなげようと昭和60年に開設しました。

しかし、5年前に、当時の大阪市の橋下市長が「税金で維持するような施設ではない」などとして、無償で貸していた土地の明け渡しなどを求める訴えを起こしました。

その後、市が1億9000万円の賃料相当額の支払いを免除する一方、財団は明け渡しを受け入れるとした和解が成立する見通しになったため、31日で閉館することになったものです。

館内には、部落差別の実態をはじめ、ハンセン病の元患者や性的マイノリティーの人たちが受けた差別被害などを伝える資料や映像など、およそ3万点が展示され、無料での一般公開が行われています。

朝治武館長は、「再出発するために和解を受け入れました。人権を学ぶ重要な拠点として改めて発展させたい」と話していました。
博物館は、別の場所に移って2年後のオープンを目指していますが、移転先は決まっていないということです。

https://www3.nhk.or.jp/kansai-news/20200529/2000030390.html

ちなみに過去、こちらではこういう企画も行なわれていて、サッカー界やガンバ大阪も縁があったんですよね…。このテーマに象徴されるように、社会問題としての人権は依然として大きな課題であるだけに、ホント残念ですよ…。

サッカー界から反差別の声を リバティおおさかでシンポ
ニュース | 2014年9月1日

f:id:bluetears_osaka:20200531160157j:plain:rightサッカーを通じて人種差別について考えようと「SAY NO TO RACISM」と題したシンポジウムが8月30日、大阪人権博物館(リバティおおさか)でひらかれた。

ヘイトスピーチが大きな社会問題となるなか、サッカー界でもスタジアムの通路に「JAPANESE ONLY」と掲げた横断幕が掲げられ、黒人選手にバナナをふるなど観客による人種差別行為が続いている。

シンポジウムはこうした現状を踏まえてサッカー界から反差別の声を上げていこうと大阪弁護士会大阪府サッカー協会、リバティおおさかが共催したもの。Jリーグの村井満チェアマン、『オシムの言葉』の著者である木村元彦さん、元日本代表主将の宮本恒靖さんをパネラーに、ガンバ大阪に選手として所属していた八十祐治弁護士がコーディネーターを務めた。

村井チェアマンは横断幕の件を聞いたとき、強烈な違和感があったとのべ、サポーターから指摘があったにも関わらずクラブ側が撤去しなかったことは差別行為に荷担したと思われても仕方がないと重大な行為であると指摘。サッカー界から反差別の声をできるだけ多く発信し、リーグ、クラブ、サポーターが一緒になって取り組んでいきたいとのべた。

木村さんは日本ではヘイトスピーチが国連から勧告を受けても野放しの状態にあるが、サッカー界では毅然と対応した。スタジアムの外でも啓発活動を展開していくことを期待したい。宮本さんは小学校や児童養護施設に出向くことも多く、そうした機会に子どもたちに対して差別に敏感になることを伝えていきたいなどとのべた。

リバティおおさかでは9月20日まで企画展『SAY NO TO RACISM 人種差別にレッドカードを』がひらかれている。

http://www.hrn.gr.jp/news/1265/

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