長崎新幹線の泥沼:やめてくれ不便になる

今となっては信じられないかもしれませんけど、かつては大阪から新潟まで、特急で乗り換えなしに行けた時代があったんですよ。

時間はかかりましたが、いい時代でした*1。今となっては路線はズタズタで見る影もありません。

昭和の鉄道風景4(ボンネット特急「雷鳥」)

大阪から新潟に行くなら、めんどくさいだけの鉄道は避けるのが賢明です。

で、長崎です。いま大阪から長崎に鉄道で行くのなら、博多か新鳥栖まで新幹線に乗って、そこからかもめ(白いのか白くないの)に乗り換えます。新鳥栖はよく知りませんが、博多は巨大なターミナル駅ですから、そこでの乗り換えは旅の途中のちょっとした買い物や気分転換にちょうどいい感じです。

そこに、武雄温泉での乗り換えを加えられると、めんどくささだけが上乗せされる感じが否めませんねえ。しかも、時間短縮効果はせいぜい10分程度、新幹線料金の上乗せも予想されると来れば、アホらしいですよ。

そもそも、実現性が怪しくなってきたフリーゲージトレインを導入しても、時間短縮は30分に満たない程度なんですよね。在来の長崎本線の単線区間を複線化して高速運転が可能な線路に付け替えれば、それだけでも相当の時間短縮が見込めそうな気がしますけど…?*2

まとめると、よほどのことがない限り、関西から長崎に行くのには現状以上に飛行機を利用するようになるでしょうね。長崎空港からは、JALANAの伊丹便に加えて、スカイマークの神戸便やピーチアビエーションの関空便もすでに飛んでますが、この路線は今後も需要が見込めるはずです。


長崎新幹線、22年度開業堅持へ 途中乗り換え方式か
野口陽、土屋亮 2016年2月24日03時08分


九州新幹線長崎ルート

 博多と長崎を結ぶ九州新幹線長崎ルート長崎新幹線)の整備計画を協議する与党の検討委員会は23日、当初予定の2022年度までに、新幹線と在来線を乗り継ぐ「リレー方式」で開業させる方向で最終調整に入った。車軸の幅を変えて新幹線と在来線の両方を走るフリーゲージトレイン(FGT)の国内初導入をめざすが、開発が大幅に遅れているため、代替措置で開業時期を堅持する方針だ。

 長崎新幹線九州新幹線鹿児島ルート(博多―鹿児島中央)の一部と在来線を経由して再び新幹線軌道を走るルートでFGT導入を前提に整備が進められてきた。だが国土交通省は昨年12月、耐久走行試験中の故障の改善に時間がかかり、FGTによる22年度の全面開業は困難と公表した。

 対応をめぐり、沿線の長崎県佐賀県の利害対立も表面化。22年度開業を前提に観光振興策を進める長崎県は予定通りに開業させるよう主張し、早い段階でリレー方式も容認する姿勢を示した。博多から近い佐賀県は新幹線導入の費用対効果が低いことなどから、開業が遅れてもFGT導入を優先するよう求めた。

 与党は今年1月、整備新幹線建設推進プロジェクトチームの中に検討委を設置し、今月23日までに長崎、佐賀両県知事の意見を聞くとともに水面下で調整。佐賀側が長崎の主張も考慮してリレー方式受け入れを検討する姿勢を確認した。今後、リレー方式での22年度開業を基本に、財政面で佐賀が不利益を被らない方策などを国交省と協議し、3月までに正式な与党案として取りまとめる。

 リレー方式が実現すると、現行の直通特急より博多―長崎間の所要時間が短縮される。ただ武雄温泉駅で乗り継ぎが必要になり、乗客に不便が生じる可能性もある。

 FGTについては、耐久走行試験で部品が破損するなど安全性が懸念されているが、国交省は引き続き開発を続ける。最短で25年度には量産車両を導入できるとしている。長崎新幹線はその段階で車両をFGTに切り替える方策を探ることになる。(野口陽、土屋亮)

http://www.asahi.com/articles/ASJ2R4F9NJ2RTIPE016.html

長崎新幹線、途中乗り換えは苦肉の策 22年度開業死守
土屋亮、湯地正裕 小野太郎、菅原普 2016年2月24日05時37分


長崎新幹線の車両による所要時間の比較

 九州新幹線長崎ルート長崎新幹線)は、トラブル続きのフリーゲージトレイン(FGT)計画を先送りし、新幹線と在来線を乗り継ぐ「リレー方式」で予定通り2022年度までに開業させる方向になった。だが、時間短縮は限定的で開業効果は落ちる。FGTをあきらめたくない国、早期開業にこだわる長崎県、負担増を警戒する佐賀県。3者の利害が絡み合った末の苦肉の策だ。

 長崎新幹線の22年度開業を堅持しつつ混乱を収拾する方策として浮上したリレー方式だが、FGTと比べると乗り換えが必要で所要時間も増える。新幹線の開業効果の低下は否めない。

 車軸の幅を変えながら走るFGTなら、博多―長崎間で乗り換えは必要なく、所要時間は最速1時間20分。在来線特急で結ぶ現行方式よりも28分短縮されることになる。

 一方、リレー方式では博多から武雄温泉まで在来線特急が約1時間10分で、新幹線が20分程度。そこに乗り換え時間もかかる。本州から長崎に向かう場合、博多で新幹線から特急に乗り換え、再び武雄温泉で特急から新幹線に乗り換える必要もある。

 FGT開発はなお、見通しがはっきりしない。改良車両の完成は4月以降。国交省は17年度に耐久走行試験を再開できれば18年度にも先行車が完成し、25年度には量産車を営業運転に使えると説明しているが、これは最短ケースだ。

 運行を担うJR九州にとって、技術的には鹿児島ルート部分開業時にリレー方式の実績があり、武雄温泉駅のホームで階段を上り下りする必要をなくす対面乗り換えも「構造上、十分に可能」(幹部)だという。

 ただ、リレー方式とFGTの両にらみが経営的な負担になる。長崎―武雄温泉間のために購入する新幹線車両は、FGTに置き換われば不要となり、二重投資になりかねない。FGTの開発状況から、社内には「全面導入後に車両トラブルが起きれば経営的な損失が大きい」(幹部)と心配する声もある。(土屋亮、湯地正裕)

■長崎は22年死守、佐賀も軟化

 昨年12月、国土交通省長崎新幹線をFGTで22年度に全面開業させることが困難になったことを公表して以来、長崎県は「開業時期を22年度から可能な限り前倒しする」という昨年1月の政府・与党の申し合わせを厳守するよう繰り返し求めた。県内各地で22年度開業を前提として再開発事業が計画されるなど、長崎にとっては譲れない一線になっていたためだ。

 FGT開発の遅れは深刻で、国交省は量産車両が導入できるのは早くても25年度と説明。22年度に開業させるには事実上、リレー方式以外に有力な選択肢はなかった。その中で長崎県の中村法道知事は今月10日、与党検討委に臨み、「開業を見すえて進められている事業が大きな影響を受ける」と、改めて22年度開業の死守を訴えた。

 一方の佐賀県は、福岡市に近く新幹線導入による時間短縮効果が低いうえ、FGTを前提とした計画を見直すことで生じる新たな財政負担への警戒感も強かった。開業時期が遅れても、在来線を走行可能で高架などの新幹線軌道を整備する必要がないFGTを導入するよう強く求めた。

 しかし、22年度開業に向けてまちづくりを進めてきた長崎県側の事情も理解できるとして、佐賀県側も徐々に態度を軟化。県の内部でも「22年度開業に間に合わせるには、論理的にはリレー方式しかない」との声が出るようになった。

 23日の与党検討委で佐賀県の考え方を説明した山口祥義知事は、FGTの開発を急ぐよう改めて求める一方、リレー方式で22年度に開業した場合の財政的な追加負担の軽減を要求。柔軟姿勢を見せるに至った。(小野太郎、菅原普)

http://digital.asahi.com/articles/ASJ2R7KZFJ2RTIPE044.html

*1:一つ補足しておくと、その反面、車両内のしかも座席でタバコが吸いたい放題だった点については、当時は暗黒時代だったと言えます。それを思うと、今はずいぶんといい時代になりました。

*2:韓国でそのパターンを散々見てきたので、このことを強く思います。ただし、韓国の場合、在来線とKTXがともに標準軌なので、フリーゲージトレインのようなものは必要がないというアドバンテージはあります。